実験住宅のエスキスから完成まで

埼玉県吉川市・モデルハウス棟新築工事
その1  その2  その3  その4  その5  その6  その7  その8  その9  竣工


 鈴木喜一建築計画工房と(株)会澤工務店は、埼玉県吉川市の吉川中央土地区画整理地内において実験住宅を建設することになりました。両者のコラボレーションによるこの家は「木心地の好い家」と名づけられました。


 早いもので、1984年6月に神楽坂のアトリエを開いて以来、今年で19年目になります。そろそろ自分が手がけた作品をなんらかの形でまとめておかなければと思っていたところに、会澤さんから協同プロジェクトの丁重なお誘いがありました。
 今までに自分がつくった住宅のエッセンスを検証しつつ、新たに現代の郊外住宅のニーズに沿った提案仕様20項目を再構築してみました。エスキスの線を引きながら(時代遅れの手描きですが)、木心地の好い家(しかもプロトタイプとなりうる住宅)をどのような思想とデザインでつくることがいま問われているのか真剣に考えています。

 会澤工務店は、埼玉県東部を拠点に、 紀州・山長商店の高品質な桧材等を使って木造軸組住宅を供給している工務店ですが、昨今のユーザーの自然志向の高まりや住まいへのデザインニーズの多様化などを見据え、無垢の木を活かした新しい家の方向性を打ち出しています。


 このプロジェクトは、エスキス・設計・工事経過・見学会のプロセスをそれぞれのウェブサイトで公開しています。完成まで、じっくりごらんください。【鈴木喜一】


コンセプトの検討

仕様20を提案 「木心地の好い家」に命名

 7月より、会澤工務店内部では「これまでの自社設計に欠けている点」「鈴木喜一建築計画工房に期待する点」などをリサーチ。「大胆な素材選択の幅拡大」や、「のびやかな空間設計の提案」「外観デザインの均一化の打破」などのニーズが確認された。これらを直ちに当工房に報告。

 8月7日、会澤保社長以下3名と、鈴木喜一建築計画工房が打ち合わせを行い、工房側から【仕様20】を提案した。協議の結果、これらのポイントを設計に盛り込むことで合意。プロジェクト名称は「木心地の好い家」に決定。この日をもってエスキス作業がスタート。

【木心地の好い家 仕様20】
1.職人の技能が現れた家  2.国産材をできるだけ使う
3.自然素材を使った健康な家・本物指向
4.外壁に木を使う  5.外と内部がつながった家
6.庭を有効に使う。ガーデニング(植物・野菜)
7.外構計画  8.楽しいディテールや装飾のある家
9.ワイルドな素材感のある家  10.引き戸を多用
11.屋根裏をつくる  12.土間のある家
13.真壁の部屋を複数つくる
14.田の字型プランを軸にして構造をシンプルに固める
15.切妻屋根を基本とする
16.内装材外装材の検討。木製サイデイングの使用。
17.玄関の建具は木製にしたい。玄関回りのデザイン
18.施主参加の家づくり  19.人が集まる家  20.エコロジーを考える


▲鈴木喜一建築計画工房での打ち合わせ風景。奥が会澤工務店、手前が工房のメンバー。この日は、過去10年間の鈴木喜一建築計画工房の作品写真を収録しCD−Rを使って、工房の空間のとらえ方、素材選定の基準などを説明。技術的な質問も続き、有意義な議論が行われた。

エスキス原案

土間の扱いで論議つづく

 9月19日、会澤工務店本社(越谷市)にて両社打ち合わせ。エスキス第1次案【左図/1階のみ】を提案。このプランを元に討論を行った。

・楽しいプランでイメージ湧いてくる(宣雄/
・車庫をビルトインしたらどうか。持ち出し梁、上部納戸も可(会澤社長/

・便所は外気に面させたい(高橋/

・浴室はユニットバスではなく手作りでいこう。1.25坪の空間もセールスポイントになる(鈴木)
・持ち出し梁では不安定なイメージ、マイナスでは(高橋/

・南北逆転プランはどうか。土間をサンルーム化して伸びやかになる(川島/

・モデル棟は入りやすさ大切。玄関が車庫の奥、では不利だ(宣雄/

・無駄なようで、3畳ほどの着替え部屋あると便利だ(宣雄/

・大きめのクロークを家族全員で利用する手もある(高橋/

以上の討論を踏まえ、下記の方針が確認された。
・全体の規模はこの程度で進める。・南側土間の案を検討する。・浴室は1.25坪、手作りとする。・車庫ビルトインは今回は不採用。・ベランダはシート防水とする。・3畳納戸を検討する。


エスキスを続行

「南北逆転」などあらゆる可能性を検討

 9月25日、鈴木喜一建築計画工房より第2次案【左上図/1階のみ】をファクスにて提案。これは、前回の打ち合わせを踏まえて、3畳の「着替え部屋」を新設し、便所を外気に面する位置に移動させたもの。
 これに対して会澤工務店より「土間を南に持ってくることで和室と居間の採光に支障がでる。また、台所と居間の使い勝手もあまりよくないのではないか」とのコメント。

 それを受けて工房では、9月27日、第3次案【左中図/1階のみ】を作成してファクス提案。
 ここでは土間を南北貫通型とし、北側玄関から長い土間を経て日差しが入り込むように変更。西側に和室を分離して配置し、その北側に4畳の土間の納戸を設置したプラン。別バージョンとしてはこのまま和室を北側にずらし、その分を和室の広縁とすることも可能である。
この提案に対して会澤工務店から、台所の狭さ、和室と納戸の使い勝手についての危惧が寄せられ、特殊解としてはいいかもしれないが、モデルハウスとしての一般解にはふさわしくないのではないか、との結論に至った。

 この間、会澤工務店側からも、逆提案の形で第2案を修正した「第2.5案」が届く。それは階段を北側に突出させ、玄関土間を縮小させたプラン。居室部分のまとまりはよくなったものの、土間が小さくなり「無難なプラン」になってしまっているのではないか、と判断。「平凡ではないが、多くの人に受入れられるプラン」の難しさを実感する。


 工房では直ちに
第4案に着手。やはり「南側土間」では採光上、無理があると考え、土間を再び北側に移動。南と東を1尺5寸(約45センチ)膨らませて、中央に囲炉裏を配したプラン【左下図/1階のみ】を9月30日にファクス提案。「一間(けん)グリッド」をそんなに逸脱せずに、必要諸室と主要動線をまとめたものである。

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