第4期(2002年度)神楽坂建築塾講義録

第17回講座
(坐学)

対論:伝統型構法とは
―大工技術の力学的検証―

講師:丹呉明恭氏(建築家)×山辺豊彦氏(構造家)
2月8日(土)18時30分〜21時 場所:高橋ビル地下2階


丹呉明恭氏 

1947年 東京都生まれ
1972年 芝浦工業大学建築学科卒業
連合設計社みねぎしやすお建築設計事務所、東京技建を経て
1976年 丹呉明恭建築設計事務所設立
1979年〜1985年 小川行夫氏に師事
【主な作品】京都嵯峨の家・林さんの家 他


山辺豊彦氏

1946年 石川県生まれ
1972年 法政大学工学部建設工学科建築専攻卒業 青木繁研究室を経て
1978年 山辺構造設計事務所設立
【主な作品】碧南市他目的体育館 我孫子市立鳥の博物館 都立府中養護学校 JR赤湯駅棚倉町立杜川小学校 他

これまで定量化されず、データによる検証がほとんどなされてこなかった伝統木造技術に、はじめて構造力学からアプローチし、実践的な研究によって、貫を使った伝統型構法の復権を提唱している丹呉明恭氏と山辺豊彦氏。誤解や思い込みではなく客観的な数値に基づいて、粘り強いそして環境にもやさしい家をつくる手法をお話しいただきました。


検証された伝統技術

丹呉:93年から山辺さんと木構造の勉強会をしています。その成果がある程度まとまってきました。その構造の勉強会をどうしてはじめたか、ということですが、私は設計屋なものですから図面を描きます。それで木造の図面をつくる時にどうも確信が持てないことが多かった。

 たとえば基礎伏図。そこにはいろんな要素がありますね。通風のための換気口をどう確保するか、人通口をどうするか、ということについて、「これで完璧だ」という確信が持てなかった。これはどうもまずいんじゃないかということで山辺さんに話を持ちかけてはじまった、ということなんです。初めは山辺さんは乗り気ではなくてね(笑)、今でも「木造に引きずり込まれた」なんて言っていますが、私としては図面をつくる時に確信をもちたい、という目的だったわけです。
 それがだんだんと研究を進めるうちに、伝統型構法を構造力学的に基礎づけたいという方向に変わってきた。それはなぜかというと、私は以前から渡り腮(わたりあご)で軸組を組む方向でやってきたんですが、山辺さんはそれに関して次々と構造計算を出して「これではもたないよ」とか、そういう話が出てくる。渡り腮は伝統的な構法なのに、なんでそれが弱い、なんて言われるのか。そんなはずはないんじゃないかと反応する。しかしその反論も実は根拠がないんです。
 大工は「墨半分残して」刻んで叩いて長ホゾを入れる、樫の硬い込み栓を入れてきちんとやっている、それが計算上どうして評価されないんだ、弱いわけがないはずだ、と山辺さんに言い続けた。
 「それなら実際にやってみようよ」と、実大の壁を手作りして実験をすることになった。その写真を後でお見せしますが、最初につくった試験体というのが資料の「貫だけ」というやつで、高さ2.7m、幅1.7mのもの、これをつくって水平加力試験をやってみたんです。
 層間変形角がδ=1/20(高さ2.7mの場合は約13cm)に至るまでに何kgの力が必要か、ということを調べました。これは山辺さんの構造計算では「600キロ」と出た。ところがこれをつくった大工は「そんなはずはない。これは伝統的なやり方でちゃんとつくったものだ。その2倍はいくだろう」と「1200キロだ!」と言う。私は山辺さんの手前もあるので、少々上乗せして800kgと予想してみました。みんなそれぞれに言い合っているうちに山辺さんも「まあ600よりはいくよなぁ」とぐらついてきた。
 結果は、560kgだった。ショックでした。ショックだったけど、「構造力学というのはここまで計算できてしまうんだ」ということを認めざるをえなくなった。だったら、自分のしていることを力学でどう解析できるだろうか、その解析に基づいて自分もつくりたい、と考えるようになって、ずっと山辺さんと一緒に研究を続けているというわけなんです。
 今日は1999年にできた家を紹介しますが、これは40坪の敷地に、15坪ずつの一、二階で延べ30坪の住宅です(「加藤さんの家」月刊『住宅建築』2000年1月号掲載。なおこの号には丹呉、山辺両氏の構造勉強会の報告記事もあり)。
 この家をとりあげるのは、ちょうどさっきの勉強会をしている最中に設計したということと、98年から山辺さんと始めた大工塾が進行中だったこと、さらに月刊『住宅建築』誌上で「木構造の標準仕様づくり」というのを連載していてそれとリンクして設計施工が進んだということ、そんなことが重なっていて私のやっている伝統型構法を力学的に解析してできた最初の住宅と言えるからです。
 それから進化はしていますが、私たちにとっては原形の住宅というべきこの家を解説していきたいと思います。途中でも疑問があれば質問してください。

 この家は、仕上げは一階が杉南京下見張り、二階がラスモルタルの漆喰塗り。内壁は土壁漆喰仕上です。これが原形の仕上げです。この住宅の木材はすべて杉です。これは私が秋田県の杉産直のモクネット【※1】という活動をしていたからここの規格材を使ったわけです。天井も床板も杉です。架構を見ると、渡り腮で梁と梁を組んでいます。そして梁と柱は込み栓でつながっている。この込み栓も山辺さんとの勉強会の成果です。この家では何百本もの込み栓を使っています。
 つまり「できるだけ長尺の梁を通し」「梁を渡り腮で組み」、「接点は込み栓でつなぐ」。これが伝統型構法の渡り腮の組み方と言っていいでしょう。


【※1 モクネット】
……モクネット事業協同組合。1990年に設立。秋田県の森林資源をつくり手からエンドユーザまでを繋いで循環させる、永続可能な家づくりを提案するネットワーク。
http://www.chuokai-akita.or.jp/mokunet/

http://mokunet.or.jp/631.html

地盤調査から設計は始まる

山辺:家を建てる前にはまず地盤調査をします。これはスウェーデン式サウンディングという方法です。これはとてもローテクな仕組みでして、先端にスクリューポイントのついたシャフトに100kgの重りを載せて、自沈するか回転で沈むかを25cmごとに半回転数を記録していく。大工塾でこの道具を持っていまして、このデータを自分たちでつくり、自分たちが地盤の性状を知るということにつながる。非常に基礎的な勉強になりますね。
 重りを載せただけで、回転させなくても勝手に沈んでいく層を自沈層と呼んでいますが、この自沈層が出た場合は要注意で、後々圧密沈下が起こるので予想沈下量を出すようにしています。たとえばこの事例では「8.3cm沈む」と予想されます。その沈下を想定した設計をしなければならないということです。また重要なのは、先端の付着土から砂なのか粘土なのか、粒子の状態で判断できるということですね。

 

丹呉:スウェーデン式を導入する前は、ただ現場の勘だけが頼りでした。地盤を調べるにしても現場で1メートルくらい掘っては「これはいいや」とか「ここは締まっている」などと判断していたんです。
 今は敷地が近いときにはスウェーデン式の道具を持っていって、大工さんと一緒に計測します。そうするとわかってくるんですが、本当にいい地盤というのは非常に少ない。大抵2mくらい下には自沈層があるもので、その結果でどういう基礎をつくるかという判断をするわけです。
 これまではどういう基礎の配筋をするかということも、あまり明快ではなかったのですが、山辺さんとの勉強会を通して地耐力によって基礎形状を決め、配筋方法も決め、更に点検口をどうつくるかというルールが確立してきたわけです。

 

山辺:「アンカーボルトはコンクリート打設前に前もってセットする」、このことが現場では意外と守られていないことを知ってショックを受けたことがあります。
 柔らかいコンクリートの表面からアンカーボルトを「田植え」のようにグリグリと揉み込んでいる。ベテランの設計者の方でもこれでいいと思い込んでいる人がいるんですよ。絶対にありえない話です。前もってセットし、コンクリートとの付着を期待しないと、引き抜きの軸力に抵抗することなんかできませんよ。現場でちゃんとするべきですね。それから、基礎立ち上がり部分のあばら筋(垂直に並んだ鉄筋)の先端につくべきフックがついていないことが実に多い。これもとんでもないことです。これらの鉄筋はスターラップといって剪断補強筋の意味がある。一方、地面と水平に底部や頂部に走っている梁で言う主筋は曲げ補強筋となる。この剪断補強筋というのは、先端をパサッと切ってしまっていたらコンクリの断面部分しか効かないことになってしまう。鉄筋が入っている効果がなくなってしまうんです。だから鉄筋の先端は曲げてフック状にしなければならないわけなんです。ちょっと曲げるだけですがとても重要なんですね。
 法改正で「基礎をしっかりつくること」と言い過ぎたせいかもしれませんが、或る住宅の新聞を読んだところ「基礎は底部と立ち上がりとを一体に打設しないと効果が無い」みたいなことが書かれていました。そんなことはありえないんで、逆T字型が構造的には一体でなくて打ち継ぎ面ができても大丈夫なんですよ。ただ、水が回り込む弊害ということはあるかもしれませんが、とにかく構造的には問題ない。こういう誤解が多いようです。


合理的な基礎のあり方

丹呉:もうひとつ、基礎下に割栗石を敷くことが一般的ですが、これについても「どうして割栗なのか」「砂利ではだめなのか」「どんな意味があるのか」といったことが不明確だったんですよね。「グリ8寸」と言われているけれど、現場も図面通りにはやっていなかったりする。これは力を地面に伝えることができればいいのであって、割栗石だろうが敷砂利だろうが変わらない。ならば私は簡単な方を採用します。

山辺:最近は環境対策の視点から、再生砕石というコンクリートを破砕したものを使うことも多くなってきました。ぼくはむしろそれを使うべきだと思います。
 木造の基礎ならば通常、地盤を根切り【※2】ますよね。それを二三日置いておくと表面が風化したり荒れたりする。だから石を敷いて作業性をよくするとともにランマーで締め固めてあげる必要がある。そのための敷き砂利なんです。だから割栗である必要はない。それよりもしっかりと突き固めているかということの方が大切なんです。それから、基礎の設計では雨のことをよく考える必要があります。粘土層では水が溜まってしまう。だから溝を切って釜場【※3】をつくって水を抜いてあげなければならない。現場監理をする人は、「土をいじる時は雨を考える」という配慮が必要ですよ。

丹呉:床下の換気についてですが、足下を固めるための布基礎によって換気がしにくくなっています。それでどうやって大きな換気口をつくるかが問題になった。
 当時、大工塾の生徒さんに長崎の大工さんがいたんです。長崎というところはシロアリがすごいところで、2階の小屋丸太まで喰われると言われます。しかしシロアリ駆除はしたくないので、布基礎にしつつも昔ながらの大きな通風量を確保する方法を考えることになりました。
 それで耐力壁直下以外はすべて換気口にしちゃうことにしました。それも換気口には無双【※4】をつけて、冬は冷気が床下に入らないように配慮しました。 


【※2 根切り】
……基礎や地下構造物をつくるために地盤を掘削すること。布基礎やつなぎ梁の場合は帯状に細長く掘削し、独立基礎ではその位置に四角の穴を掘削する。またベタ基礎の場合は全面を掘ることになる。

 

 

【※3 釜場】
……掘り下げた地盤に湧水または雨水などが貯まった場合、その一角に一段掘り下げたスペースを設けそこに水を集る。これを釜場と呼ぶ。貯まった水は揚水ポンプ等で抜く。

 

 

【※4 無双】
……鴨居の外に連子板を打ち、内側に連子板を組んだ戸を入れた窓。戸の移動によって開閉する。

コンクリはロースランプで打て

山辺:基礎の役割とはなんだろう。まずは重量を地盤に伝えること。そして地震の時には基礎を介して摩擦力・受動土圧でもってエネルギーを地面に伝える、という役目なんですね。ではアンカーボルトはどうしますか? 皆さんはどうしていますか。図面にきちんと指示していますか。ましてや現場ではどこが耐力壁かすらわからない、それで適当にアンカーボルトを埋めているなんてことになっていませんか。まず、耐力壁があったらそこの両端にアンカーボルトを打つ、という習性を持つべきですね。
 木造をやっている方から言われることに、コンクリート自体が長持ちしなくなっているのではないか、という意見があります。その通りで、いまの日本で市販されているレディミクストコンクリートを買ってきて施工するばあいは、かなり注意しないと、長持ちする建物・コンクリート構造物をつくるということはできないと思いますよ。なぜかというと、コンクリートのJIS製品は、硬さを示すスランプ【※5】が18か21なんですね。要は単位水量【※6】が多すぎて、コンクリートが柔らかいということ。それに混和剤【※7】を入れたりして施工性つまりワーカビリティを向上させているからなんです。たしかにアメリカでもAE剤【※8】を使います。エアをたくさん入れるコンクリートをつくる。しかしアメリカではスランプは12とか10になっている。2倍も違うんですよ。この差が、日本のコンクリートのろくでもない品質につながっているんです。骨材にいいものを使えとか、いい砂を使え、なんて言っても今の日本の実情だと難しい。しかしスランプだけを低くせよ、ということならすぐにでもできることでしょう。ロースランプで15cmでいけ、と言いたい。木造の基礎なんかたいして複雑ではないんだから、12cmでもいいくらいですよ。JISの規格では、スランプの値はプラスマイナス2.5cmの誤差が許容されているんです。そうすると、18cmで打て、と指示しても実際は20.5cmで打ってもいいことになってしまう。だからぼくは18にはしないようにしています。15以下で打て、と言う。それでも17.5まではいいことになっちゃうけどね。

 日本では21cmのコンクリートを打って慣れてしまっている。だから水みたいなものを打って、それで平気だと思っている。商売の面でも、立米いくらでカネを払っているから軟らかいコンクリートを打ったほうがいいに決まっている。そういう体系が日本のコンクリートを悪くしているというのが事実です。だからみなさんも図面に15cmのスランプと書くだけでもずいぶん違ってくるんじゃないかなと思います。

 それともうひとつ挙げれば、資料でも書きましたが、基礎立ち上がり頂部の鉄筋に沿って生じる沈みクラック(ひび)ですね。これなども十分、二十分経って表面をコテで均すだけで簡単に直ることなんです。こんなのがあったら人災ですよ。だから現場の監理はしっかりやってもらいたいですね。


【※5 スランプ】
……slump。「落ち込む」という意。生コンクリートを高さ30cmの円錐型に型どって置いて、それが沈み込む量(cm)を計測する。コンクリートの軟らかさを表わす指標。この試験がスランプ試験。

 

 

【※6 単位水量】
……まだ固まっていないコンクリート1立方mに含まれる水の量。コンクリートの配合の設計の重要な要素。単位水量を単位セメント量で割った比を水セメント比という。

 

【※7 混和剤】
……セメント、水、骨材以外の材料で、コンクリートなどに特別の性質を与えるために、打込みを行う前までに必要に応じて加える材料。防錆剤、超遅延剤、増結剤、収縮低減剤、水和熱低減剤、耐寒防凍剤、浸食性物質吸着剤などがある。

 

【※8 AE剤】
……air entraining agent。コンクリートなどの中に、多数の微細な独立した空気泡を一様に分布させ、コンクリートのワーカビリティーおよび耐凍害性を向上させるために用いる混和剤。

伝統型構法の詳細

丹呉:家づくりのシーンを見ていきます。柱は4寸角の杉、貫は9分×4寸の杉、込み栓は6分φの楢、と仕様を決めています。貫は四段です。ここらへんの数字はすべて山辺さんといっしょに勉強会をやって決めた数字です。梁はすべて渡り腮で組み、壁倍率【※9】2.0の土壁を使っています。
 上棟の時は、初日に土台を組んで一階の柱まで建てておいて、二日目に貫を入れながら建て込んでいくんですが、だいたい二日で終わります。渡り腮構法の軸組はこれが原形です。

 

山辺:長手方向の梁が同じ断面で続いてますが、梁はできるだけ同一材で長く伸ばしたい。そこに直交方向の梁がすべて渡り腮で乗っかってくる。出隅の柱を見てみると、上の柱は上段の梁に対しては長ホゾ込み栓で結んでいる。一方下の柱は下段の梁に対して長ホゾ込み栓で止まっていますね。出隅で耐力壁が入ったとすると、一方の引き抜きに対しては片持ち効果で押さえ込んでしまえる。コーナー部分の浮き上がりを押さえられるんです。だから梁はできるだけ継がないで一本物でいくべきなんです。上からの重量方向の支持能力という点でも渡り腮は効果的だと思うんです。もうひとつ、地震で揺れても柱が梁を上に載せている関係上、支持能力が十分あり変形についていけるということもわかります。

 

丹呉:この写真ではすべての接点が渡り腮で組まれ、柱の上下ともに込み栓打ちがされていることがわかります。束の上下も込み栓打ちです。柱のホゾと同寸の27×120mmの「つなぎ材」というを、引き抜きへの対策として上段梁と土台とをつなぐかたちで入れています。これが外れなければ渡り腮ははずれることはない。これで弱点はカバーできていると思います。大工塾の大工さんの中には、渡り腮の仕口そのものを人形束という十字の込み栓で固定してしまおうという案を出す人もいますね。現在では軸組図を書いた時点でつなぎ材の本数を数えています。壁のつくり方ですが、東京近辺では竹小舞を編める人がなかなかいないということもあり、大工さんだけでつくれる土壁を工夫してみました。4分(12mm)×1寸(30mm)の板の木小舞を打ち付けてつくります。これなら実大実験でも竹小舞の壁と比べても耐力的に遜色ありません。

「込み栓は堅木」というのが常識で樫等が使われていたんですが、柱や梁が杉なので樫は使いません。今は楢の既製品です。あまりいい材質ではないのですが、逆にこの程度の強度のものがいいようです。φ6分(18mm)の丸栓です。

 

山辺:なぜ楢材なのか。込み栓をあまりに硬い木でつくってしまいますと、引っ張りによって部材が繊維方向に裂けてくる「割り裂き」という現象が起きやすくなるからです。この現象はまだまだ構造的には定量化できないやっかいなことなんで気になります。だから、込み栓が壊れてくれた方がいいという意味で、楢材程度のものを使うわけです。

 

丹呉:事務所の仕様としては、梁は一番小さいものでも6寸(180mm)にしています。それはホゾのためなんです。梁には上からも下からも柱の長ホゾが刺さってきます。長ホゾは、うちでは最低3寸と決めていて、その真ん中の1寸5分のところで穴を開けて込み栓を打つのです。つまり長ホゾが3寸×2で6寸なければ納まらないわけです。

 こういう仕口をきちんと計算する……山辺さんと付き合っているとどんどん値段が上がっていくんですよ(笑)。だからデザイン面ではあまりこだわらないようにしています。込み栓だって、本当は角の込み栓が格好いいんだけれど、丸栓の方が作業性がいいので私は丸でやっています。


【※9 壁倍率】
……建築基準法の壁量計算の場合は、耐力壁の長さ1mあたりの基準耐力が1.275kN (=130kgf)であることを壁倍率1.0とし、これとの比率でその耐力壁の強さを表す。具体的には「木ずりその他これに類するものを柱及び間柱の両面に打ち付けた壁を設けた軸組、厚さ1.5 センチメートルで幅9 センチメートルの木材若しくは径9ミリメートルの鉄筋又はこれらと同等以上の耐力を有する筋かいを入れた軸組」とされている。なお「壁量」とは壁倍率×耐力壁の長さである。

構造設計キーワード(モクゾウドットコム)に図解あり。

 

 

 

 

接合部の弱さをどう克服するか

山辺:これまで話してきた渡り腮構法でなく、いわゆる民家型構法の場合は2間(3640mm)間隔で通し柱を使う関係上、梁材自体は4m材を使うことができるので、ある程度規格化できるというメリットがあるんですが、柱と梁の仕口を考えなければなりません。もし伝統構法にこだわるのであればほとんど金物を使いませんから、雇いプレート(板)を入れて込み栓で締めていくことになると思います。この違いをふまえて渡り腮構法と民家型構法を比較して見てみるとおもしろいと思います(資料参照)。

 先程もいいましたが、渡り腮の場合上からくる荷重に対しての強度は150×120の断面で554L、蟻落しの場合は132Lまでしか耐えられません。大入れで腰かけがある場合(12頁図5)はその腰かけの部分がめり込んで持たせますがそれでも396Lしかもちません。このあたりを良く理解して計画しなければなりません。例えば蟻落しで小梁をかけている部分にピアノ等の200Lそこそこある物を乗せてしまうと、132Lしか持たないのですから偏って力をかけてしまうと危ない訳です。このあたりを意識しながら使っていく必要があると思い、それぞれの仕口の耐力比較表を作ってみました。

 その実験をやってみたのですが、先程の大入れ型のもの、蟻落しの継手をプレカットで作ってみて、梁を3m飛ばし荷重をかけてみたのです。そうすると荷重をかけてまもなく支持点が約24mm落ちます。この断面について曲げの応力(強さ)・たわみ(変形)・剪断応力【※10】について構造計算したところ、曲げ応力は約900Lとでました。ところが実験ではその半分程度の荷重で、仕口の部分か降伏し落ちました。僕らは構造計算をして梁の断面を決めますよね。ところが計算の半分以下の数値で端部が落ちてしまうわけです。つまりどういうことかというと、やはりある程度のスパンを飛ばす梁については、その支持点がネックだなと思わなければならないのです。これはプレカット業者の方々も含めて検討していかなければならない事です。短いスパンのところはどうってことないのでしょうけど、やはり大きく飛ばす場合は大入れの腰かけの部分を多目にとるとか、そういった工夫が必要だなと感じますね。

【※10 曲げ応力 たわみ 剪断応力】

曲げ応力:外部荷重によるはりの湾曲によって内部に生ずる長さ方向の引張り、または 圧縮応力。

たわみ:梁等に垂直荷重を与えたときの荷重方向の変位量。巻末資料参照。

剪断応力:ずれに伴い、材料の横断面に、互いに平行で向きが逆に生ずる応力。

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