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皆さんは窓のない住宅の実例をどれくらいご存知でしょうか。広瀬鎌二の「スチールハウス」や川合健二の「ドラムカンの家」の窓は、安藤忠雄の「住吉の長屋」はどうだったかな、と思いめぐらせる方がおられるくらいではないでしょうか。法的にも窓のまったくない住宅は許されず、外観に窓のない住宅は想像も難しいのではないでしょうか。家に窓はつきもの。そして窓は住宅外観や街並み景観のイメージ形成の大きな要素となり、その配置や形、大きさのほか、開閉形式や窓枠の色など、設計に際し工夫やアイデアを盛り込める部分でもあります。また住宅性能の上では、開口部はひとつの弱点であり、断熱、気密、日射の遮蔽、結露の防止といった温熱環境や外壁の遮音性能などは、開口部をどのようにするか、言い換えるとどのようなサッシを使うかによって決まってしまう、と言っても過言ではないでしょう。現在私の勤務する会社では、基本的性能を持ったベーシックな製品以外に、さらに高い性能を持った規格製品も幅広く用意しており、形や開閉機能以外の性能面でも多くの選択肢を用意し、工業製品として品質を管理し価格を抑え、日本国内はもちろん海外市場への納入態勢も整えています。
住宅の窓がアルミサッシで作られるようになったのは昭和40年頃からで、高度経済成長と軌を一にしてあっという間に日本中の窓がアルミサッシになりました。米国では住宅にアルミで作った窓はあまりないと聞きますし、ヨーロッパでもアルミだけの窓は少ないらしい。なぜ日本だけがアルミの窓だらけになってしまったのでしょうか。他にも選択肢はあったはずなのに、理由はよく分かりません。何か一つの流れができると、皆が同じ方向に走り出してしまう、そんな国民性なのでしょうか。
日本の住宅サッシのルーツは木製の建具で、開閉形式は引き戸(スライディング)形式でした。ビル用サッシでは、スチール製のサッシにガラスをパテでとめるという方式が、アルミ以前にありました。材料が木からアルミになっても、住宅では木製建具の遺伝子は引き継がれ、上下框と縦框の接合は木製建具と同じいわゆる印篭方式で、縦框の見込み内に上下框が呑み込まれる形になっています。この接合形式は強固であるばかりでなく、中空のアルミニウム形材(*1)同士を組み合わせても、中空の小口を見せずに隙間も作らず接合することができる、まことにすぐれものの接合形式なのです。下框は引き戸であれ掃き出し窓であれ、床レベルにあることが多いため、幅木の役目も兼ねて他の框より大きな見付となっています。これが戸車を納めるにも都合が良く、いまだに引き違い窓や引き戸の下框は他の框と比べて大き目の見付けになっています。これがヨーロッパの窓になると、開閉形式も開き戸(スウィング)形式が中心となり、日本の掃き出し窓のように窓であり出入り口であるような存在はなく、人が出入りするドアと窓は明確に分けられ、窓の四方の框も縦横でサイズを変えるような面倒なことはせず、同じ大きさの部材をトメ接合で組んであるものが多いように思います。
かつての木製建具の血が騒いだのか、アルミニウム形材の表面処理(*2)を工夫して、木目調のアルマイトなどというのが、業界の中だけかも知れませんが、もてはやされたことがありました。アルマイトをすることにより木目のような模様が表面にできる技術ですが、どう見ても木のようには見えず、まがい物感は払拭できずに、多額の開発費をかけた木目調アルマイトは数年で消えていきましたが、これも木製建具をルーツとする日本のサッシの歴史的宿命のようなものだったのかも知れません。
住宅の窓はアルミサッシだらけになりましたが、玄関で履き物を脱いで家に上がるスタイルはなくなっていませんし、あまりにも露骨なまがい物は受け入れられなかったことなど、物は変わっても様式は変えないとか、代用品が出てきてもその気にさせるものでなければ受け入れなかったりといったことに、日本人の持つ健全な感性を感じます。
(*1)アルミニウム形材:アルミサッシの部材は熱間押出しという加工方法で作られます。原材料はアルミニウムとマグネシウムとシリコンを主構成材とする合金で、押出し性が良く、熱処理により窓にちょうど良い強度の出る材料です。さらに着色アルマイトも可能な、建材にはうってつけの材料です。一般にアルミ押出し形材もしくは単にアルミ形材と呼ばれています。
(*2)アルミニウム形材の表面処理:いわゆるアルマイトと呼ばれる、陽極酸化皮膜+電着樹脂塗膜の組み合わせが住宅用サッシでは一般的ですが、アクリルやフッ素の焼き付け塗装はビル外装のパネルなどに多く使われ、最近では光触媒を使った汚れを寄せ付けない塗装も行われるようになってきました。
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