うたと文・ゆふねなおこ


  
  
  
  
  
  
  
  
  
花  を
火  夢
   想
   す
   る

日々を歌う 8

骨董市にて


 野外の骨董市に初めて出かけてみた。とにかく朝に弱い私は、夕方出かけていったのだったが、神社の入口に行ってみると、どうも様子がおかしい。あまり人の気配がしないのである。神社の鬱蒼とした森を、足早に抜けると、信じられないことに、もうみんな帰り支度を始めているではないか。せっかく来たのに、冗談じゃないと思いつつ境内をうろうろとまわってみた。しばらくすると、まだ帰り支度を始めていない店をみつけることができた。管笠をかぶった気のよさそうなおじさんが座っている。
「あの、皆さんどうしてこんなに早く帰り支度を始めているのですか?」と私はそのおじさんにたずねてみた。するとおじさんは
「お客さん、冗談いっちゃこまりますよ。こっちは明け方から商売しているんだからね。お天道さまがのぼると同時に始めて、お天道さまが沈んだら帰る…というわけですよ。なにしろこの世界は、江戸時代からかわっちゃいないんだから」と言う。少なからず私は、このおじさんの話に感動してしまった。この日本にそんな世界がいまだに存在しているとは…。すっかり気をよくした私は、その店で藍色の小皿を買った。最後のお客だから、と六百円のところを四百円にまけてくれた。しかし最後に
「この皿は幕末から明治にかけての貴重なものだよ」とおじさんが言った言葉がどうもひっかかってしかたがない。つくづくその皿を見てしまった。まあ、このさいあまり深く考えないでおこう、と思いつつ私は帰路についたのだった。

初出:1995年10月『アユミギャラリーニュース』第13号


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