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夏は祭りの季節だ。幼かった頃、祭りといえば近所の盆踊りであった。子供の私にとって、踊りの輪の中に入ることはさして重要ではなく、露店で売られている様々な品物の方が魅力的だった。色とりどりのお面やヨーヨー、強烈な色の食べ物たち。どこか嘘ものくさい雰囲気が、かえって子供心を刺激した。しかし、そんな中で私の心を深くとらえたのは、意外にも地味な海ほおずきであった。紅白の海ほおずきが、小さな竹のカゴに入れられているのを見たとき、名状しがたい神秘的な気持ちになった。これを手に入れるためなら他のものはいらないと思った。海ほおずき屋のおじさんは、ポケットから『舌切雀』の婆さんが使っていたような小さな鋏をとりだすと、ちょちょと海ほおずきを入れてくれた。一粒百円の海ほおずきを紅白一つづつ買った私は、すっかり文無しになってしまった。おじさんは、海ほおずきの鳴らし方を教えてくれたが、私にとってはそんなことはどうでもよく、ただただ海ほおずきの存在自体がすごいことなのであった。
家に帰ると、私は飽きもせず海ほおずきをながめた。夜は乾かないように水に浸して冷蔵庫に入れる。幾日も飽かずながめていたが、学校が始まる頃になるといつしか海ほおずきのことは忘れていった。
ある日、ふと思い出して冷蔵庫の中をのぞいてみると、二粒の海ほおずきはカラカラに乾いていた。
今でも祭りの季節になると、このときのことを思い出す。
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