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私は団地住まいなので庭というものを持ったことがない。ところが最近公団側が「庭の気分でも味わってください」とでもいうのか、私たちが勝手に使用していい土地を提供してくれたのだった。暖かくなって花屋さんに色とりどりの花がならびはじめると、私の中で長く眠っていた園芸熱が突如わいてきたのだった。どうせ育てるならなにか利用できるものがいいと思い、ハーブを中心に植えることにする。さっそく苗を買ってきたのだが、すぐ植えることはできない。まず「耕す」という行為が待っているのだった。土を耕すという行為は、生れてはじめてのことである。
大きなスコップを握りしめて力いっぱい土を掘り起こしてゆく。するとたった二平方メートルの土地からは、いろいろなものが出てくるのだった。昆虫やミミズ、大きな石や雑草の長い白い根、などなど…。すっかり土を耕しおえたときには、おしりの筋肉が痛くてしかたがなかった。心地よい疲れとともに精神的な充実感がみなぎってくる。けれど、しばらくして日もすっかり暮れてしまうと自分たちの食料さえ育てたことのない私たちの生活が、ふと恐ろしくなった。それが当たり前であるかのような生活が…。
苗を植えてから一カ月近くがすぎた。美しい花を咲かせてくれた苗もある。しかしきれいごとばかりというわけにはいかない。油断をすると虫が発生したり、花が腐ったり…。この小さな庭から、これからもいろいろなことが見えてきそうだ。
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