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暖炉の火が静かに燃えていた。落ち葉松林の中のこの小さな山のホテルで、私達三人は一カ月間働いてきたのだ。今日はここで過す最後の夜である。三人ともそれぞれまったく違った場所で暮すことになる。私はあの巨大な東京にもどらなければならない。それにしても火というのは不思議なもので、じっと見つめているとあらゆる思考力がとまってしまう。
長い長い時が流れたのち
「あ…天使の輪…」と加雪君がつぶやいた。
「あ、本当に天使の輪…」マーちゃんはとろけそうな表情でゆったりと答える。はっとしてとなりを見ると、小さな女の子と男の子が静かに座っていた。二人のツヤツヤとした美しい髪には確かに天使の輪がくっきりと浮かび上がっている。暖炉の火がパチパチと燃え上がるたび、そのわはりったいてきにゆらぎ、金色に輝いた。男の子はまだあまりに幼いので火をいぶかしそうに眺め、女の子の背に寄り添っている。
「こんな美しい輪を持っていることを気づかずにこの子達も大きくなるんだろうね。私は本当になくしてしまったけれど…」マーちゃんはなくした物を語りながらも幸福そうだった。彼女は帰ったら結婚するという。加雪君は自分の喫茶店をもってみたいと、少し熱をおびて話した。私はここを出て何をするのだろう。不思議に優しい時間が流れてゆく。いつのまにか二人の天使もいなくなった。落葉松林の夜が深くなる。
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