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とにかく見たい。絶対見たい、という気持ちがつのっていた。車のガラスに、ひたと額をつけて夜空を見つづける。いくつもの夜の町をぐんぐんとおりすぎてゆく。
「あ!流れた」次の瞬間、車の中でわーんと声をはりあげていた。流星だ。白い太い光の尾を、ながくながく引いて消えた。
一九九八年十一月十八日午前一時。今日の寝場所が決まる。冷たい風の吹きすさぶ山梨県須玉町のとある工事現場。新月の夜空に星がひしめいている。何枚も服を着込み、寝袋に入るが、とにかく寒い。でもどうしても獅子座流星群を見たいのだった。冷たい風の吹きわたる夜空に、ひとつふたつと流れる星を見ていると、自分が地球にへばりついて生きていることさえ忘れ、宇宙にほうりなげられたような気持ちになった。星の群の中で寝ているような、やわらかい浮遊感をともなって……。ひたすら夜空を見上げるうちに、瞳そのものが宇宙の暗闇になってしまい、とんでもなく大きな存在になってしまう。午前四時をまわったころ、ひときわ大きな星が流れた。真っ白い尾を引きながら、流星痕と呼ばれる美しい煙の輪を残した。それは、小さなオーロラのように少しづつ形をかえてゆく。この流星は、人々に長く記憶されるかもしれない。でも、私が忘れられないのは、小さなエメラルド色の流星。夜明け間近に流れた美貌の星だ。それにしてもなんて短い時間だろう。生まれたと思ったら、もう死んでしまっている。出会ったと思ったら、次の瞬間にはもう別れてしまわなければならない。そんなはかないものを見るために、こんな寒い中、ひたすら暗闇を求めて、今日は人間たちが夜空を見上げている。
結果をいってしまえば、当初予想されていたような大流星雨の出現はなかった。見れるにこしたことはなかったが、でもどうだろう、人間の予想どおりにはならなかったことこそ、本当のロマンのような気がする。
テンペル・タットル彗星は大きな瞳をとじて、今日ものんびり軌道をめぐっていることだろう。
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