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突然、列車は止まった。そして車内の灯りが消える。一瞬何がおきたのかわからず、皆ざわざわとなったが、雪明かりに照らしだされた人々の表情は、おだやかだった。久しぶりに降った《東京における大雪》によって、列車のパンタグラフが潰されてしまったのだった。復旧には相当な時間がかかるというアナウンスが入る。けれど、この雪明かりの中でなら、しばらく閉じ込められるのもわるくはないな、と私は思った。ちょうど人家の灯りもあまりない場所に止まったものだから、地の底からしみだしたような雪明かりが、ことさら美しい。暖房が止まってしまった車内には、人々の息が白く吐きだされ、一人一人の顔も青白く照らされて、雪の国の人になったように見えた。あきらかに、この非日常をだれもが楽しんでいた。おだやかに人々がひそひそと話す中に、突然大きな笑い声がおこる。みると、二人の青年が、いかにも嬉しそうに、窓に顔を寄せている。彼らは子供のようにはしゃいだ。私も子供のように嬉しくなって、むかしむかし、東京に大雪が降った日のことを思い出した。どんどん降り積もって、雪が星までとどけばいいと思った。それを強く願ったのだった。しかし、翌日起きてみると、すでに雪はやんでいて、きらきらと日を反射していた。
そうこうするうちに、車体が大きな音とともに揺れだした。列車の上に積もった雪を落とすための処置がなされているらしい。
「まるでジュラシック・パークだね」とだれかが言うと、みんなどっと笑った。
雪は激しく降った。夜空をうめつくすほどに。どれくらいの時間がたったのか。暖房のない車内の温度は、どんどん下がってゆくようだった。とにかく寒い。そしてだれもが疲労していた。もうだれもしゃべりはしない。
「復旧には、いましばらく時間が……」というアナウンスの声は、かすかに震えていた。ときおり思い出したように列車は揺れたが、何の役にもたっていないようだった。それにしても雪が激しすぎる。やがて雪は、列車の窓のなかばを埋めつくしていった。雪は恐ろしいほど白かった。
はっとして飛び起きると、あたりは真の闇だった。いつのまにか眠ってしまったのだ。雪明かりなどもうどこにもない。私は、夢中で窓を探した。やっと窓を見つけたが、開けようとしてもびくともしないのだった。窓をこぶしでおもいきり何度も何度も叩いた。
それからどれほどの時間がたったのかはわからない。もう一度力ませに窓を叩くと、車体が妙な音をたて始めた。そして次の瞬間、大きな音とともに、つめたい塊がなだれこみ、私は、一瞬のうちに押しつぶされた。
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