うたと文・ゆふねなおこ


植  一
物  日
た  を
ち  二
の  分
意  に
志  ち
の  ぢ
妖  め
し  し
さ  映
   像
   の

日々を歌う 14

「わき役」はいない


 何の小説だったかは忘れてしまったが、その中に出てきた一人の貧しい料理人のことを、今でもふと思いだすことがある。その物語の中で、彼はたった一度、主人公の男女に暖かくおいしい料理を提供しただけにすぎない。その料理も主人公の都合によチて、ほんの少し口をつけられただけで下げられてしまう。その後、その料理人については一言もふれられず物語はすすみ、やがて主人公たちのハbピーエンドで幕はおりるのだった。

 何の変哲もない物語だったが、たった一度きり登場したあの料理人のことが、なぜかとても心に残チている。たぶん、彼はあの物語の中で華々しいこととは無縁に生活していくだろうけれど……。

 生きていく上で、脇役というものはありえないと思う。だれもがやはり立派な主人公だろう。多くの人々の生き方を調味料に、一人一人がすばらしいメイン料理になれたらこんなに素敵なことはないと思う。

初出:1996年10月『アユミギャラリーニュース』第19号


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