うたと文・ゆふねなおこ


  
  
  
  
  
  
  
  
  
る  が
   ふ
   え
   ゆ
   け
   ば

日々を歌う 13

進化する廃虚


 アユミギャラリーのスケッチ旅行で、群馬の丸山変電所跡を訪れたときのこと。廃墟という言葉には寂しい響きががあるが、そこは以外にもカラリとした明るい雰囲気をたたえていた。中に入ってみると、窓も屋根もやぶれ、植物たちがおもいおもいに繁っていた。大きな黒蝶がゆっくり飛んできてはまた音もなく出てゆく。鈴木先生は気持ちよさそうに居眠りをはじめた。私はというと、いつのまにか窓ガラスの破片を夢中で拾い集めていた。そのガラスはそれほど古いものではないようだったが、私には美しいものにみえた。キラキラしさこそないが、淡い緑色がとても魅力的だ。それらを新聞紙に包んで私は家に持ちかえった。

 今まで廃墟というものは少しづつ滅びていくものだと思っていたのだが、あの変電所跡を訪れて、実は少しづつ進化しているのではないか、と思うようになった。人の価値観や時間とはまったくちがう次元で進化をとげているのではないだろうか。

 あのガラス片を新聞紙からとりだしてみると、廃墟の中でみたような美しさは失われていた。たぶん、あのゆっくりとした進化の時間から、私が奪ってきてしまったからかもしれない。

初出:1996年8月『アユミギャラリーニュース』第18号


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