うたと文・ゆふねなおこ


  
  
  
  
  
  
  
  
  
に  た
降  い
る  走
   り
   ゆ
   く

日々を歌う 12

土の記憶はよみがえる


 まだまだ肌寒い日があるとはいえ、今が一番歩くのに気持ちのいい季節。一日中、座りっぱなしの仕事ということもあって、通勤するのに一駅分だけ歩くことにしてみた。たった二十分程の道のりだが、毎日毎日ほんとうに多くのものに出会うことができる。この目まぐるしい時代の中にあって、私が毎日通う道々の風景は、ゆっくりと変化している。木々も鳥たちも畑も、そしてつながれた三本足の老犬も…。
 そんな中でも、特にこころまちにしていることがある。それは桜の木が何本も植えられた公園の中を通り過ぎること、今では葉桜となったこの木々の植えられている土の上を歩くことである。その土の上を歩くとき、私の足は素直に喜ぶ。足がこそばゆいように笑う。土は天気とともに毎日変化しているのだ。ふんわりとしたり、湿っぽかったり、水たまりをつくったり……。
 人の足がアスファルトになれてしまったといっても、ここ何十年かのことだろう。ほんの少しの刺激で土の記憶はよみがえる。足は正直者だから、案外こんな単純なことで喜んでくれる。

初出:1996年6月『アユミギャラリーニュース』第17号


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