[ ツキアタリ ]
村上登美江 

 ここ数年、初夏の訪れを覚えるころ、アユミギャラリーの中庭に欅遊庵という魅惑的な小屋らしきものが出現している。その出現を目のあたりにした私は、己の奥深くに眠れるイベント魂に火が付き、去年はOne Night barテケテケを開催させてもらった。今年はあいにく欅遊庵の出現はなかったか、その代わりに縁台というこれまた魅力的なアイテムが出現し、またまた内なるイベント魂がめらめらと燃えたのである。縁台と言えば月見でしょ。という勝手な解釈でもって今年は中庭でお月見の会を催させてもらった。

 月見数日前、当日の天候が悪いらしいとの第一報が某所より入り、屋根のある場所を確保するなどの急な動きもあったが、そんな憂慮はなんのその。当日は曇天ながらも月を拝むこともでき、古今東西より老若男女が集う楽しいイベントとなったのである。

 アユミギャラリー、三角屋根の斜め右後方にきりりと浮かぶ月。欅遊庵の名の由来である欅の枝葉の間にもシュンと指すような光が届く。月とは女性的なものだと思っていたけど、こうこうと輝く満月とはなかなか攻撃的で、雄々しくある。よく太陽と月を男女で比喩するけれど、女性的と言われる月の中にも男的なものがあり、その二つで一つの相反するものが混在することによって月を形成するのだなぁ。なんてことを酔いに任せてぼんやりと思うのであった。

 少々のアルコール、炭の焼ける音、白く丸いお月見団子、楽しい仲間とのたわいもない会話、ろうそくの淡い灯り、ゆるやかな夜風、どこかから聞こえてくる音楽、尽きることのない夜空。いつも張りつめている五感がぼやけ、己を覆っている外皮と、それを囲む空間との境界があいまいになる。月光の魔力がさらにあいまいさに拍車を掛け、自己というものが薄くなり、いつのまにかワタシは時も存在も空間も関係ないナニモノデモナイになっていた。

 月に酔ったか、酒に酔ったか......。

 ふと地面を見下ろすと、足下から黒い影がすっと伸びている。月影が私の存在を 証していた。


第二回みんなのコラム!・優秀作品 

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選者寸評

都会のとある中庭で、風流な月見の宴が催されたようである。月見とは酒を飲む口実なのか、縁台とセットでイベント魂に火をつける導火線なのか。たとえそうであっても、いや、そうであればこそ、宴の夜空にはぜひとも月が必要となる。そんな作者の気持ちを知ってか知らずか、宴の当日、雲間に見え隠れする満月はいたって気ままだ。月に叢雲(むらくも)という。雲があるからこそ、月の存在感は逆に強調され(男性的!)、月の魔力が実在と不在の境に作者を彷徨わせた。はかなさゆえに美しい「花見」と同様、「月見」も日本人の繊細な自然観を育んできた大切なイベントと言えるだろう。「湯当たり」ならぬ「月当たり」的?解釈の面白さと滑らかな文体が魅力的なエッセイである。(kazu)