[ 春の到来 ]

 春一番はとっくに吹いたというのに最近の冷え込み方ときたら、春の到来はまだまだ当分先なのではないかと思えてしまうほどだ。これを花冷えと言うのだろうか?とにもかくにも世間は春を今か今かと待ちわびているようで、桜の開花予報を耳にすることが多くなってきた。
 一般的に言って春は桜の季節なのだ。あるいは人によっては卒業式・入学式の季節、場合によっちゃあ別れの季節なんて言うちょっとセンチな人もいるかも知れない。しかし虫大好き少年だったボクにとって春といえば虫が活動を開始する季節だった。(春虫虫で蠢くとは良くできた漢字だと思う。)冬の間は枯れて色の少なかった草木が徐々に色を取り戻し始め、いたる所に生き物の気配が感じられるようになった春の庭を観察するのには、まだそう長くもない日照時間では全然足りなかったことを覚えている。
 それではいつからが春なのか?まぁ、季節なんて本来連続しているもので、それを無理やり区切るのは人間中心主義的発想だなんて意見もでてきそうだけど。とにかく暦の上では立春を過ぎれば春なわけだが、今日の日本の2月4日はまだ冬真っ盛りで、とても春とは言い難い。それでは桜前線はどうか?これはなかなか説得力があり多くの人の支持を得られそうだ。でも、春が来た結果として桜が咲くのだから桜前線より前に春は来ているんじゃないか…?
 ボクは子供の時分から「春が来た日」を自分なりに感じていた。それは「匂い」、である。春の匂いを嗅いだ日から春ということにしていたのだ。その匂いは、芽吹きだした木の芽と湿気を含んだ土の匂いが太陽の光に交じり合ってできたような匂いで、ボクはけっこう好きだ。しかし、ここ数年どうもこの春の匂いを嗅いでいない気がする。異常気象やら環境破壊の所為で匂いが変わってしまったのだろうか?それともボクが春の匂いに気付かなくなってしまったのだろうか?前者であれば由々しき事態であろうし、後者であればそれはそれで何だか少し寂しい気がする。

アユミギャラリーニュース66号(2004年4月)に掲載 

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