[ 冬の情景 ]

 ここ一水寮の住環境は一年を通じて季節感に富んだものである。まぁ、一言で言えば夏暑くて冬寒いのだ。ただ今回は季節が季節だけに夏のことについては触れないでおく。それはそれでいろいろあるのだ。さて、去年の冷夏の影響で今年の冬は暖冬になるのでは、といった希望的観測データがあったかどうかは定かではないが、とにかく年が明けてから、めっきり寒くなってきた。それまでは布団一枚と掛け布団一枚でなんとかやってきたが、ここに来て掛け布団を二枚に増やし、シーツの下にもフカフカの敷物を入れることにしている。
 冬の生活において、否が応でも「寒さ」と真っ向から対決しなくてはならない場面が幾つかある。まずは朝の起床の時だ。ただでさえ、夢の国から現の世界に帰ってくるのは易しいものではないのに、ましてや息をすると白くなるような三畳間である。けれども最近は電気ヒーターのタイマー機能でもってこの対決は過去のものになりつつある。朝の対決は解消されつつあるのに対し、寝る前に銭湯に行くときの寒さとの対決は回避不可能である。なんてったって、外にでるわけだから、言わば敵の陣営に切り込んで行くようなものである。夕ご飯をたべてストーブにあたって、ついでにお茶なんかすすっちゃって心も身体もすっかりリラックスモードになっている時なんかは「銭湯モード」に気持ちを切り替えるの容易いことではない。へたすると「今日はいいかぁ」なんてことになってしまう。そして最後に忘れちゃいけないのが、真水による食器洗いである。なんと、というかやっぱりというか、ここ一水寮にはお湯が無い。湯を使いたい時はヤカンで沸かさなくてはいけないのだ。でも一々沸かすのも面倒くさいし、どっちにしろ最後は水で濯がなくてはいけないので、「つめてぇー」と叫びつつ、結局真水で洗ってしまう。冬の寒さを一番感じるのは実はこの時で、あまりの冷たさに心臓が止まるんじゃないかと、時々ドキドキしてしまう。しかし習慣とはこわいもので、先日お湯が使える環境でも当然のように真水で食器洗いをしてしまった。慣れれば慣れるものだ。もしかしたらこの寒い日々があるからこそ春の一水寮はあんなに暖かいのかも知れない。……なーんて意気がってはみたけれど、やっぱり湯水ぐらいは「湯水の如く」使いたいなぁ、というのが本音。

アユミギャラリーニュース65号(2004年2月)に掲載 

  index