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スーパーに行く途中、N文具店の前を通った時のこと。何気なく視線を向けたショーウィンドウに、外に出られないでアタフタしているスズメバチの姿が目に入った。外に出してやんないと。これは子供の時からの習性で、水溜まりに落ちた虫とか、なんか困ってる虫を見ると無性に助けたくなるのだ。まあ、イモムシをカマキリに食わせたり、蟻をアリジゴクに落としたり、鯨鍋も好きなので、動物愛護主義者とは間違っても言えないが。 N文具店には何回か買い物に来たが、そんなに親しいわけではない。だから、いきなり入って「スズメバチ入ってますよ、外に出しましょう」というのはいかがなものか。 そこでボクは小芝居を打つことにした。要するに、ボクは文房具屋に用事があって来店、その時初めてスズメバチに気付く、ということにするのだ。そうと決まれば善は急げである。ボクは客を装ってお店に入った(こうやって書くとなんだか強盗みたいだ)。すると奥の方からいつものようにおばさんが出てくる。ボクはサインペンを買うことにした。そしてショーウィンドウの方を見つつ、「あっ。スズメバチ、入ってるみたいですよ」と何気なく告げる。 「えー、どこどこ?」商品を包んでいたおばさんの顔はにわかにかき曇る。ショーウィンドウの所に行くと、相変わらず透明な壁にスズメバチは行く手を阻まれていた。 「コップ、ありますか?あと下敷き、みたいなのも」おばさんは奥の方から持ってきたコップと、商品の下敷きをボクに手渡してくれた。ボクはハチにそーっとコップを近づけ、パカッとかぶせる。そしてすかさず下敷きをコップとガラスの間に差し込む。かくしてスズメバチのキャッチ&リリースはことのほかあっさりと成功した。 すると、おばさんはリンゴを一つ持ってきて「これはほんの感謝の気持ちよ」といってボクにくれた。この思わぬ報酬にラッキー♥と思いつつも、なんだか少しだけ申し訳ない気もした。 アユミギャラリーニュース63号(2003年10月)に掲載
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