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そのちょっとした変化に気が付いたのは寮に戻ってすぐであった。 天井近くに設置していた「罠」が所定の位置からズレていた。「もしや」という期待と不安。恐る恐るのぞいてみると、案の定である。そこには粘着性ネズミ取りシートにベッタリくっついて動けなくなったネズミがいた。 この寮にネズミ騒動が持ち上がったのはいつの頃だっただろう?台所でお茶を飲んでいると流しの下からガサゴソと音がしてきたのだ。以来、ネズミはその活動範囲を壁の中や天井裏まで拡大した。合わせて食料品への被害が出始め、始めはコメやパスタの袋が食い破られ、次いで植木や建具が齧られ、果てはレトルト食品のパック、タッパーまでもがその攻撃対象となった。行動も徐々に大胆になり、キッチンに人がいても何度となく姿を現すようになった。当初は食糧の防衛に終始し、ネズミが他の家に引っ越してくれる事を希望してきた寮側も、エスカレートする攻撃に対し、やむを得ず攻撃に転ずる事にした。粘着性ネズミ取りシートを寮内の各所に設置したのだ。 罠は掛けたものの、ネズミは当分の間は捕まらなかった。だが内心ホッとしていたのも事実である。というのも以前同じタイプのネズミ取りを使用した事があるのだが、その時はネズミに同情し、逃がしてやろうと思い立ってしまい、したたかに指を噛まれてしまったのだ。 しかしネズミはつかまってしまった。まだ絶命してないらしいが、その反応からみてだいぶ弱っているようで、ボクは「おーい、生きてるか?」などと声をかけてみた。罠を掛けときながら「大丈夫か?」もないものだ。ネズミは目を閉じ、呼吸の度に腹をかすかに上下させていた。「今ならまだ助かるかも」という思いが一瞬浮かんだが、以前の事もあるので思いとどまり、シートごと袋に入れゴミ置き場に走る。翌日、ゴミ置き場の前を通った時は、既に回収車が全てを持っていった後だった。ナンマンダブ、ナンマンダブ。 アユミギャラリーニュース60号(2003年4月)に掲載
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