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4月になって、進学や就職あるいは転職などで、心機一転「がんばろー!」と気合いを入れている人も多いことと思う。そんな新しい環境でよくいるのが、よせばいいのに、周りのみんなにあだ名を付け回っているヤツである。「キミは外人っぽいから、英語の先生みたいって事で、ティーチャーね。」「そのついでにキミはキョージュでいいや。」「キミはお父さんって感じが漂っているからトーチャンね。」「キミはどう見ても社長だろ。」といった具合で全く大きなお世話である。困った事に、この先制攻撃が強力であると本名より先に定着してしまい、場合によってはそれから何十年とそのあだ名を背負っていく事になってしまうから油断ならない。 そういう訳でって事でもないが、そんな心機一転に付き物なのが引越しである。これは聞いた話だけど、ある引越しのささやかな風景である。 引越しの依頼者は4月になって急に福島から東京本社への転勤を命ぜられ、急遽引越しを余儀なくされたあるサラリーマンであった。受けたのは、とある東京都内の引越し屋さんである。引越し家業はこの時期が1年の中で最も忙しく、人手が足りないという事で入社したばかりの新人君が同行する事となった。 早朝、トラックは首都高速を快調に走っていった。 「まだ渋滞していなくてよかったッスね。ところで今日はどこまで行くッスか?」 「福島だ。さっきも言っただろ。」 「そうッスね。」 首都高速を抜けて東北自動車道をトラックは未だ快調に進む。宇都宮を過ぎた頃であった。 「あれれれれれー!」と突然新人君が奇声を上げた。 「どうした!?」 「宇都宮過ぎましたけど、どこまで行くッスか?」 「だから福島だッ!」 「福島って、もしかして東北のッスか?」 「そうだッ!」 「いやーっ!てっきり都内に福島ってトコがあんのかと思ったッス。東北の福島まで日帰りなんてハンパないッスね。」 「普通だ・・・。」 予定よりも早く福島の依頼者宅に到着。早速、作業にかかる。依頼者は急な話であった為、ほとんど準備ができていない。荷物の中で目を引くのが、骨董品コレクターなのかその手の割れ物が多かった事だ。とりあえずそれらを台所に集め梱包を急ぐ。とその時、なにを思ったか新人君。大きな壺を持って外へ運び出そうとしていた。 「ドコ行く?」 「はぁ?」 「割れ物の梱包は鉄則だぞ!」 「そうッスね。あッ・・・!」 グアァラッシャン!!・・・・・・。 悪いことは重なるもので、床に置いてあった別の壺の上に落としてダブルパンチを食らわしてしまったのである。親方は直ちに平謝りしてその場はなんとか取繕った。 帰りの高速道路で新人君曰く「これだけの引越しッスから壺のひとつやふたつ割れちゃってもしょうがないッスよね。」 「・・・・・・・・・。」 そしてなんとか引越しを終えてその日の深夜、会社に戻ることができた。 「お疲れさん。じゃあ、トラック車庫に入れるから後ろ見てくれ。」 「ラジャー!」「オーライ。オーライ。オーライ。オーライ。」 グアァラッシャン!!・・・・・。 「スッ、ストーップ」 「・・・・・・・・・・・・・・・。」 次の日からその新人君は「使えないヤツ」と呼ばれていた。聞いた話だけど。 アユミギャラリーニュース66号(2004年4月)に掲載 index ![]() |