[ 闘将の条件 ]

 阪神が18年ぶりに優勝した。今年のチームは一時期7割を超える勝率を誇りデータの上では阪神史上最高の強さであったが、井川、赤星、今岡など活躍した選手の名前が次々と浮かぶものの、主役の誰かがズバ抜けて良かったという訳ではない。18年前のバース・掛布・岡田に代表されるダイナマイト打線ほどの迫力は無かったように感じる。「知らん間に勝っとった。」という印象だ。そんな中、最もクローズアップされているのが就任2年目の闘将・星野監督である。10年連続Bクラス、4年連続最下位と低迷していたチームを、外様である、これまで中日一筋だった監督が建て直したことから、日産のゴーンや米沢藩主であった上杉鷹山などが話の引合いに出され、その手腕をみんな挙って褒め称えている。選手の約1/3を入れ替えるという大リストラを敢行したからとか。選手に競争意識を植付けたからだとか言われているが、要は選手が「その気になった」ということらしい。
 史上最高と言えば、ただ今公開中の映画「踊る大捜査線 THE MOVIE 2」は、なんでもあの「千と千尋の神隠し」を興行記録で凌ぎコチラも史上最高となったそうである。この映画は警察署を舞台にした元々TVドラマで、冷酷非情な本庁のキャリア、保身のみに努める所轄の署長以下上層部、そして最前線で悪戦苦闘する下っ端。そんな組織の上下関係を皮肉ッぽく描き出して人気だ。ちなみに、いつぞやのスペシャル版で深津絵里が立ち寄った喫茶店としてアユミギャラリーが登場し話題になった。
 そう言えば、阪神の話であった。巨人との開幕戦のことである。これは、阪神は9回2死まで7点リードしておきながら、それを追着かれ最後は引き分けるので精一杯、限りなく負けに近い引き分けとなってしまった試合である。試合後、星野監督は全選手・コーチを集め「よく引き分けてくれた」と労った。そして、勝てなかったのは監督のミスであると言い切り頭を下げたという。それは、闘将としてならした監督だけに、監督を良く知る田淵コーチですら意外だったとコメントしている。そうして阪神の快進撃が始まる事になる訳であるが、「長年負けつづけていた頃は、自分の成績しか関心は無かった。」と語る阪神生え抜きのダメ虎選手までが、勝つためのチームプレーをするようになったのである。「その気になった」という事である。そして主役不在のチームが優勝を勝ち取る事となる。面白い事に、個人の成績も以前の保身に徹した頃より良くなっているのであった。
 「下を信頼して任せ、後は上が責任を取ればいい」は確か柳葉敏郎演じるキャリア室井管理管の言葉である。

アユミギャラリーニュース63号(2003年10月)に掲載 

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