『チベット寺院・建築巡礼』
大岩昭之著
東京堂出版
2005年




[ チベット寺院・建築巡礼 ]

 2004年3月に開かれた大岩昭之写真展「ポタラ宮とチベット建築」(アユミギャラリー)を、僕はある種の感動を覚えて観ていた。これだけ広範囲にチベット文化圏を歩いている人が現在の日本でどれだけいるだろうか。チベット文化圏の取材は1982年を皮切りに24回を数えているという。しかも愛用のカメラで撮った写真が素晴らしい。僕はすぐさま、友人の編集者で東京堂出版の小林英太郎さんに電話をかけ、その写真展を観てもらったと記憶している。まだ日本ではチベット建築のまとまった文献が乏しいので、ぜひ大岩さんに本という形でまとめてほしかったからである。
 出来上がった本を繰ってみて、大岩さんはやっぱり写真集をつくりたかったんだろうなという気持ちがこみ上げてくる。随所に折り込まれている写真構成がそれを物語っている。小さな扱いの写真の中にも訴求力のあるものが多く、残念ながらこの本に掲載できなかった写真もかなり多かったのではないかと推察する。それにしてもこの本には、豊富な写真が満載されている。本という枠の中から写真が飛び出てくるような感じも受ける。
 その迫力のある写真を支えるようにチベットの文化・宗教・建築が訥々と語られる。写真より文章が饒舌でないのは大岩さんの誠実な人柄かもしれない。訥々と丁寧にチベットという風土を解説している。やや硬めの文章を解きほぐすようにやわらかくしているのがチベット探訪日記で、このくだりは臨場感があり、読者をチベットの旅に誘う。
 ともかく、ささやかな発端をつくった者として、この本が世に出たことは本当にうれしい。写真を軸に、論文・解説と紀行文が立体的に重なっている興味深い本ができあがった。

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