[ 壊されてゆく風景と散らかった部屋 ]

7 カンランパの家(橄欖[土覇])  ※[]内で一文字

 景洪ジンホンのバス駅に行って出発間際の橄欖[土覇]カンランパ行きに飛び乗った。南下すること36キロメートル、約一時間二〇分。瀾滄江を右に見て山道を行く。この川は下ってメコン河となり、ミャンマー、ラオスを流れる。橄欖[土覇]カンランパに着いて坂道を降りて行く。少し寒かったので酒造りをしている民家でトウモロコシのきつい白酎を飲ませてもらう。さらに道なりに降りて瀾滄江に突きあたる。渡し舟に乗って対岸に行く。岸辺に待っていた三輪車に乗る。五分と経たないうちにタイ族の集落を見つけていきなりストップをかける。
 京哈村の昼下がり。タイ族の高床の家に招かれた。十段ほどの踏板を上がって居間の戸を開くとカマドと食器棚がある。最小限度の生活必需品がそろっているだけである。ガランとして暗い大きな部屋だが、奥には蚊帳の吊ってある寝室がある。壁面の板がやや外に向かって傾いているのが妙に落ち着く。
 ああ気持良さそうな家だなと感じて、バンブーのカーペットに座りこむ。風通しがよく、壁板の隙間から透かして外が見える。くつろいでいると急に睡魔が襲ってきた。遠くで子供たちの声が絶えず聞えている。不思議な木箱にのって空にポカンと浮かんでいる夢を見た。
 目が醒めたら食事の用意が出来ていた。
「ツーハンだよ、早くおいで」
 この家の主は[口米]波乱さん。67才。バナナの葉に盛った糯米もちごめと辛い青菜スープをすすめてくれる。多くを語らず、きりっとして頑なでやさしい。この家には入れ替わり立ち替わり子供たちや親族が出入りしているが、いったい何人で住んでいるのだろう。娘の[口米]温乱さんにこの家のことを聞いてみた。
「この家は五年前、男四人と女二人でつくった。15000元もかかって波乱婆さんはたいへんだったよ」
 私は寝ぼけまなこをこすりながら、とにかくスケッチブックに向かった。階下ではチャボや七面鳥が歩いている。黒い豚は掃除機のように地面に落ちている食料を探し歩いている。洗濯物が風に少し揺れている。
 カンランパの[口米]波乱さん。きっと名前のように波瀾に満ちた半生だったのだろう。


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