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1 散らかった部屋(東京神楽坂) 散らかった僕の机と頭。進まない原稿。本棚からはみ出た関連書物の山。1999年の冬から春にかけて、なぜか僕は極度のスランプで疲弊し、現実の仕事に翻弄されながら、それでも中国各地の壊れゆく民家と対話していた。 日ごとに失われつつある中国の伝統的な民家。それを現時点で「記録」し、その生活風景を「記憶」しておくことはアジアに生きる人間にとって、いや地球に生きる人間にとって大切なことではないかと思えた。それは現代の文明社会において、人間が生きていく本質を維持し続けることと同義でもあるだろう。 ということで『中国民家探訪事典』(東京堂出版)の執筆中なのだが……、中国大陸はずしりと荷が重い。うっかり書けないぞ、と思い込んでいるのかもしれない。締切りがとうに過ぎているのにいっこうに進まない。 「鈴木さん、がんばってる? そろそろ原稿読ませてくれないと……」と各方面から電話が入る。 「いやあ、まいったな。あまり出来ていないんだ。緊急の仕事が入ったり、それに神楽坂建築塾も出発するし、と、と、とにかくがんばります」 やれやれ。そして僕は気晴らしに近所のビア・バーに行く。あと一ヶ月格闘したら、きっと晴れやかな地平に出るだろうと思いつつ……、グラスの中のつかのまの静寂に溺れる。 index ![]() |