『野の娘─詩集』
 中川一政著
 講談社文芸文庫
 1994.6

[ 詩集 野の娘 ]

 中川一政(1893〜1991)という画家に直接会ったことはなかったのだが、この本や『我思古人』等を通じていろんなことを教えられた。彼のエッセイや詩集には私の琴線に強く響いてくる言葉が少なからずある。その中から一つだけ紹介しておく。「見える境地にいる時、拙い一筆触、一色彩の間にも神の恩恵がひそむ。力と光はそこから発する」
 私はよく旅に出かけてスケッチをしているのだが、現場で100パーセント描く、ということを心がけている。これは知らず知らず身についたものだが、中川一政という先人もそのような描き方をする人だった。つまり選び取った対象(現実の風景とか人とか建物とか)に忠実に接近し、我を投入して現場と融合しようとする。そこにこそ真実があるかのように迫っていく態度なのである。


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